真夜中の音

夜の静けさが好きだ。

街の灯りも消えてみんなが寝静まった頃。私の眼も脳も次第に研ぎ澄まされていく。アスファルトを滑る  昼間とは違う車の音。時にけたたましく鳴り響くクラクションやブレーキの音。この近くに病院があるせいか、悲しげな旋律を流しながら走る救急車のサイレンも殆ど毎晩 聞こえてくる。

人里離れた 車の音など聞こえてこない田舎に住んだ事もある。田圃の蛙たちが大合唱しているような山奥。

沖縄の離島、石垣島よりももっともっと南の小さな小さな島。そんな暖かい場所にも住んでいた。波の打ち寄せる音しか耳には入ってこない。

何処も 嫌いではないけれど、幼い頃から聴いていた音がやっぱり懐かしくて、なんとなく落ち着くのだ。それは大都会でもなく、田舎でも 海辺でもなく、始めに記したくらいの街なかがちょうど良い。アスファルトを転がるタイヤの音がスキだ。特に雨の日の音がいい。適度な騒音がスキだ。雑音がいい。トラックやバイクが過ぎ去っていく音をBGMに、私は今夜も 自分だけの贅沢な時間と付き合っている。

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